よくある困りごと Q&A

多くの当事者がどこかでぶつかる「どうしよう」を集めました。気になるところだけ開いて読んでください。答えはひとつの例です。あなたのペースで、使えそうなものだけ持っていってください。

こころのこと

自分がFTMなのか、よくわかりません。

わからなくて大丈夫です。むしろ、多くの人が長い時間をかけて「たぶんこうかな」にたどり着いています。

  • 「男性として扱われるとほっとする」「女性として扱われるとしんどい」など、どんな場面で気持ちが軽くなるか・重くなるかをメモしてみる
  • FTM、トランス男性、Xジェンダー/ノンバイナリーなど、いろいろな人の経験を読んでみる(「これ自分だ」と思う言葉が見つかることがあります)
  • 話せる場所(専門の相談窓口や交流会)で、言葉にしてみる

ラベルは、自分を説明するのに便利な道具にすぎません。急いで決める必要も、一度決めたら変えちゃいけないこともありません。

誰にも話せなくて、ひとりで抱えています。

それだけでもう、かなりがんばっています。まずは顔も名前も知られずに話せる場所から始めるのがおすすめです。

  • 電話やSNSの相談窓口(匿名でOK)
  • 当事者の交流会やオンラインのコミュニティ(見ているだけの参加でもいい)
  • 文章で吐き出す(日記、鍵つきのメモ)

「死にたい」「消えたい」と思うほどしんどいときは、その気持ちのまま相談していいんです。24時間の窓口もあります。

まわりのFTMの人と比べて、焦ってしまいます。

SNSでは「ホルモン◯年目」「胸オペしました」と、進んでいる人の姿が目に入りやすいですよね。でも、治療をする・しない、いつするかは、体のこと、お金、仕事、家族、気持ちの準備で一人ひとり違います。

比べる相手は、昨日の自分くらいで十分です。止まっている時間も、ちゃんと前に進むための時間です。

家族・まわりの人

親に伝えたいけど、どう切り出せばいいかわかりません。

いくつかのコツがあります。

  • 伝える前に、自分の安全を確保する:経済的に頼っている、強く否定されそう、という場合は、時期をずらすのもひとつの選択です。伝えないのは逃げではありません。
  • 手紙やメッセージにする:顔を合わせると言葉が出ないなら、文章で渡すのも◎。相手も落ち着いて読み返せます。
  • 「何をしてほしいか」をひとつ添える:「〇〇って呼んでほしい」「すぐ理解しなくていいから、知っていてほしい」など。
  • すぐに受け入れてもらえなくても、それで終わりではない:最初は驚いて否定的だった家族が、時間をかけて変わっていくことはよくあります。

家族向けの説明は「家族・友人・パートナーの人へ」にもまとめています。そのまま見せて使ってください。

勝手に人に言いふらされてしまいました(アウティング)。

あなたは何も悪くありません。本人の同意なく性のあり方を他人に伝えることは、重大な人権侵害になりえます。

  • まず、信頼できる人や相談窓口に話して、ひとりで抱えない
  • 職場や学校で起きたなら、相談窓口(ハラスメント窓口など)に記録をもって相談できます。いつ、誰が、誰に、何を言ったかをメモしておくと役立ちます
  • 自治体によっては、条例でアウティングの禁止を定めているところもあります
恋愛やパートナーのことが不安です。

「いつ打ち明けるか」「受け入れてもらえるか」は、多くの人が悩むテーマです。性自認と、好きになる相手の性別は別のもの。恋愛の形も人それぞれです。

打ち明けるタイミングに正解はありませんが、相手の反応が怖いときほど、自分の安全とペースを優先して大丈夫です。

病院・治療

どこの病院に行けばいいかわかりません。

性別違和の診断や治療は、「ジェンダークリニック」「GID外来」「性別違和外来」などの名前で、大学病院や精神科・婦人科・泌尿器科のクリニックが行っています。

  • 日本GI(性別不合)学会の情報から、認定医や医療機関を探す
  • 交流会やコミュニティで、実際に通っている人の話を聞く
  • 初診は予約が数か月先になることもあるので、早めに問い合わせる

診断の流れは、ガイドラインに沿って精神科医などとの面談を重ね、体の検査をして、2人の医師の意見がそろって診断……という形が一般的です。

ホルモン治療を始める前に知っておきたいことは?
  • 体の変化:声が低くなる、ひげや体毛が増える、筋肉がつきやすくなる、月経が止まる、など。声の変化など、やめても元に戻らない変化もあります。
  • 定期的な検査が必要:血液検査(赤血球の増えすぎ、肝機能、脂質など)で体の状態を見ながら続けます。
  • 費用:ホルモン療法は原則として保険がききません(自費)。注射は2〜4週に1回程度が多く、継続的な出費になります。
  • ニキビ、気分の波、抜け毛などの変化が出る人もいます。
  • ホルモン治療は避妊にはなりません。子宮・卵巣がある場合、妊娠の可能性はゼロではありません。
ネットや個人輸入で手に入れたホルモン剤を自己判断で使うのは危険です 量の調整や副作用のチェックができないため、必ず医師のもとで治療してください。
手術のこと、保険はきくの?

2018年から、乳房切除術や子宮・卵巣の摘出術などの性別適合手術が、条件を満たす認定施設で受ける場合に限り、保険の対象になりました。

ただし、ホルモン療法(自費)をしている人は、保険診療と自費診療を組み合わせる「混合診療」にあたるため、手術も事実上自費になってしまうという問題が指摘されています。最新の状況は、受診する医療機関に確認してください。

手術のもう少し詳しい話は、からだのこと(デリケートな話)にまとめています。

婦人科に行くのがつらいです。でも行ったほうがいい?

待合室の雰囲気や、名前を呼ばれることがしんどい、という声はとても多いです。それでも、子宮や卵巣がある人は、それに関わる病気の検査や治療が必要になることがあります。子宮頸がん検診などは、性自認に関係なく体の状態に合わせて受けることが大切です。

  • ジェンダークリニックと連携している婦人科を紹介してもらう
  • 予約時に「番号で呼んでほしい」「通称で呼んでほしい」と伝えてみる
  • ホルモン治療の有無を医師に伝える(検査結果の見方が変わることがあります)

名前・戸籍の手続き

名前を変えるにはどうしたらいい?

住んでいる地域の家庭裁判所に「名の変更許可」を申し立てます。医師の診断書や、新しい名前(通称)を使ってきた実績がわかる資料が判断材料になることが多いです。

流れや準備したものは名前と戸籍の性別を変えた日のことにまとめています。

戸籍の性別を変えるには、手術が必要なの?

ここ数年で大きく状況が動いているところです(2026年10月時点の情報)。

戸籍の性別を変えるには「性同一性障害特例法」にもとづいて家庭裁判所に申し立てます。2人以上の医師の診断に加え、法律には次のような要件が書かれています。

18歳以上—
結婚していない現に婚姻をしていないこと
未成年の子がいない現に未成年の子がいないこと
生殖腺の要件2023年10月、最高裁が憲法違反で無効と判断。卵巣などを取る手術は求められなくなりました。
外観の要件最高裁は判断せず、各地の裁判所の判断が続いています。2024年の広島高裁や2025年の札幌家裁など、手術なしで変更を認めた例が出ています。法律の改正はまだ行われていません。

個別のケースでどう判断されるかは、家庭裁判所や弁護士、支援団体に相談するのが確実です。

参考:最高裁大法廷決定(2023年10月25日)、広島高裁決定(2024年7月)、札幌家裁決定(2025年9月)の報道、日本学術会議 見解(2026年6月)

名前や性別を変えたあと、何を手続きすればいい?

戸籍が変わると住民票は自動で変わりますが、それ以外は自分で変更が必要なものが多いです。

  • マイナンバーカード(市区町村役場)
  • 運転免許証(警察署・運転免許センター)
  • 健康保険証・資格確認書(勤務先、または市区町村)
  • パスポート
  • 銀行口座・クレジットカード・証券口座
  • 携帯電話・電気ガス水道・ネット回線
  • 年金・勤務先の人事情報・資格や免許の登録
  • 各種ポイントカード・通販サイト・SNSなど

新しい戸籍謄本や住民票を数通まとめて取っておくと、あちこちで使えて便利です。

仕事・学校

履歴書の性別欄、どう書けばいい?

厚生労働省が2021年に出した履歴書の様式例では、性別欄は「男・女」の選択ではなく任意記載になっています。書かない、という選択もできます。

市販の履歴書や企業の指定様式で迷ったら、この様式例を使うのもひとつの方法です。面接でどこまで話すかは、あなたが決めていいことです。

職場のトイレや更衣室がしんどいです。

多くの人が感じている困りごとです。2023年には、トランスジェンダーの職員の女性トイレ利用を制限した国の対応を違法とする最高裁判決も出ました。

  • だれでもトイレ・多目的トイレの場所を把握しておく
  • 更衣は個室や時間をずらして使えないか、信頼できる上司や人事に相談する
  • 相談するときは「こうしてもらえると働きやすい」と具体的な希望を伝えると話が進みやすい

職場の人ができる配慮は暮らしの困りごとにもまとめています。

健康診断が憂うつです。

会場で性別ごとに分けられたり、名前を呼ばれたりするのが苦手な人は多いです。

  • 人事や健診機関に、時間をずらして受ける・個別に受けることができないか相談する
  • 職場の健診ではなく、近くの医療機関で個別に受けて結果を提出できる場合もあります
  • 問診票や検査項目について不安があれば、事前に健診機関へ電話で確認しておく

毎日のこと

胸つぶし(ナベシャツ)が苦しいです。
  • サイズは小さすぎないものを:きつければきついほど平らになる、わけではありません。痛みや息苦しさの原因になります。
  • 長時間つけっぱなしにしない:目安として1日6〜8時間程度までにし、寝るときは外す、という助言がよくあります。
  • 運動するときは外すか、ゆるめのものに:呼吸がしづらくなります。
  • テープや包帯で代用しない:皮膚や呼吸への負担が大きくなります。
  • 息苦しさ、胸や背中の痛み、肌荒れが続くときは、医療機関に相談を。

上に着る服で見え方はかなり変わります。服の選び方もどうぞ。

身分証の性別と見た目が違って、窓口で困ります。

銀行や病院、宅配の受け取りなどで「本人ですか?」と聞かれてしまう場面ですね。

  • マイナンバーカードの券面の性別表記について、配慮の申し出ができる場合があります。お住まいの市区町村の窓口に確認してみてください
  • 病院では、受付で「番号で呼んでほしい」「通称で呼んでほしい」と伝える(対応してくれるところも増えています)
  • 「書類上の名前が違うんです」と短く言える定型文を自分の中に用意しておくと、気持ちが少し楽になります
美容院や床屋、温泉・ジムが行きづらいです。
  • 髪:なりたい髪型の写真を見せるのがいちばん早い。メンズカットが得意なお店や、LGBTQフレンドリーを掲げるサロンもあります
  • 温泉:貸切風呂・家族風呂、客室露天風呂のある宿を選ぶ
  • ジム:個室シャワーのある店舗や、着替えが少なくてすむ24時間ジムを選ぶ人も
このページについて 調べた情報と当事者の声をもとにまとめた一般的な内容です(2026年10月時点)。制度や医療の情報は変わることがあります。医療・法律の具体的な判断は、医師・家庭裁判所・弁護士などの専門家に確認してください。