FTMの情報は、若い人に向けたものがほとんどです。でも、性別を変えた人も、いつかは年を取ります。 「大人のFTM」として、年を重ねてからのことを少しずつ書いていこうと思います。1本目は、老後と介護の話です。
気になるのは「体を見られる」こと
介護が必要になれば、入浴や着替え、下の世話を、誰かに手伝ってもらうことになります。 そのとき、体を見られて「このおじさん、昔は女性だったんだ」と思われるかもしれない。 本人が気にするかどうかは人それぞれですが、変な目で見られたくない、と感じる人は多いのではないかと思います。
これはFTMだけの話ではありません。トランス女性の人にも、まったく同じ不安があるはずです。 今、介護を受けている世代には、性別を変えた人はまだ多くありません。 でも、これから年を重ねていくわたしたちの世代にとっては、20年、30年先の、現実の話になっていきます。
調べてみると、まだほとんど手がついていない
日本では、トランスジェンダーの高齢者が介護を受けることについて、まとまった調査はまだほとんどありません。 2026年に発表された上智大学の調査では、全国の福祉事務所の68%が、性的マイノリティについての研修を「実施したことがない」と答えています。 介護の現場でも、どう向き合えばいいか戸惑う職員がいることが、研究で報告されています。
制度や現場の準備が追いつくのを待つだけでなく、自分でも少し考えておいたほうがよさそうです。
わたしは、まだ何もしていない
正直に言うと、わたし自身は老後や介護について、まだ何も備えていません。
ただ、高校時代の友だちが「いつか、老人ホームのような場所をつくりたい」と話していたことがあります。 知り合い同士が集まる場所なら、もともと偏見もないし、気をつかわずに過ごせる。仲のいい友だちも呼べたらいいね、と。 まだ案の段階で、本当に実現するかはわかりません。それでも、いい考えだなと思いました。
わたしも、結婚するかどうかはわかりません。もしひとりだったら、そういう場所で暮らすのも悪くないと思っています。 近くに顔見知りの仲間がいて、畑をやったりしながら、結婚している人もしていない人も、一緒に過ごす。 事業をもう少し大きくできたら、そんな場所づくりに関われたらいいな、と考えたりもします。
今からできそうな備え
わたしもまだですが、調べてみて「これならできそう」と思ったことをまとめておきます。
- 伝えておきたいことを書き残す:呼ばれたい名前、体のこと(手術やホルモン治療の経緯)、介助で気をつけてほしいことなどを、エンディングノートやメモに残しておく
- 頼れる人を決めておく:自分の代わりに希望を伝えてくれる人。家族に頼みにくい場合は、信頼できる友だちやパートナーに
- 医療の情報をまとめておく:これまでの治療や、続けている薬のこと。入院や施設入所のときに、説明しなくても伝わるように
- 相談先を知っておく:介護のことは、地域包括支援センターが最初の窓口です。性的マイノリティへの理解をはっきり示している事業所や、LGBTQの支援団体に相談するのもひとつの方法です
- パートナーがいる人は:結婚していない場合、住んでいる自治体にパートナーシップ制度があるか調べておく
入院したときにホルモン注射が打てなかった経験は、ニュースページの熊本地震の記事に書きました。 体のことを周りに伝えられないと困るのは、介護だけでなく、入院や災害のときも同じです。
まだ先の話だからこそ
20年も30年も先のこと、と思うかもしれません。でも、先の話だからこそ、今から仲間と話しておけることがあります。 「こんな場所があったらいいな」という声が集まれば、いつか本当に、そういう場所が生まれるかもしれません。
あなたは、どんなふうに年を取りたいですか。よかったらお便りで聞かせてください。